権利処理実務者の諸々日記

著作権や肖像権等の権利処理に携わってきた筆者が周辺書籍の紹介等をします。

技術と著作権

技術の発展と著作権法は考えなければならないことが沢山あります。例えば、AIが制作する作品に著作権を付与するべきか否か。

最近はこの辺のところに興味があります。

まだいろいろな意見がありますし、5月に発表された知財推進計画2016では、人間の関与の仕方で著作物かどうかを決めたらよいのではという議論がなされています。

 現行の著作権法では著作者とは「著作物を創作する者をいう」と定められており、サル等の動物が撮影した写真や証明写真など機械が撮影した写真などは著作物ではありません。

 そのルールを単純に当てはめる(つまりAIを機械とする)ならば、AIが制作した作品は著作物とはならないだろうと勝手に思ったりしています。

 

 知財推進計画2016の概要でも記載されていた「The Next Rembrandt」プロジェクト*を考えると、レンブラントの作品は保護期間が切れているので「レンブラント風」の作品を制作しても権利は働きませんが、これが権利の生きている作品の場合であれば、著作者や著作権者はそもそも「○○風」の制作にあたり、許諾を出すでしょうか。

 *レンブラントの全作品をスキャンし、人工知能レンブラントの画風や構図を学習させ、「レンブラント風」の作品を制作するプロジェクト

 

 なんてことを、うだうだと考える今日この頃でした。

権利処理と平和

ご無沙汰しております。

8月になりギリギリですが、ブログ再開の宣言です!

といっても、今日のテーマはちょっと重い。

権利処理をしているとこの時期(正確にはもう少々前)はちょっと切ない仕事があります。それは戦争ドキュメンタリー番組の権利処理です。

私もこれまで、グアム、フィリピン、広島、長崎といろいろな戦争の映像をみてきました。今年はある映像を探すために沖縄戦の映像をまとめたDVDを4本立て続けに試写しました。そして、その都度本当に思うのは戦争はすべきではないという当たり前のこと。

ただ、リアルに兵士の亡骸が物のように扱われ、肉と化している映像を目の当たりにすると、恐怖もありますが、その人たちの無念さがひしひしと伝わってくるのです。もう70年以上前の映像なのに。

そういう映像を仕事ながら見ることができるのも権利処理をしているからこそなのですが、できれば戦争ドキュメンタリー番組など作る意義すらなくなるような平和な時代が来るようにと心の底から思います。去年は戦争番組担当しなかっただけに、今年の衝撃は結構なものでした。

ブログ再開でいきなりの戦争ネタ。次回からはもう少し明るいネタを提供します。

再開第1回なので、字数が少ないのはお許し下さい。

ブログサイトと音楽著作権

ご無沙汰しております。

 

どうしてもブログを書けない状況?環境?にありまして…。でも、そろそろそんな状況、環境からも抜け出せそうなので、少しづつ復活していきたいと思います。

 

そんな第一弾は、動画投稿サイトと音楽の著作権について、です。

先日、JASRACの動画投稿サイトでの音楽利用というページを見ていたら、

http://www.jasrac.or.jp/info/network/pickup/movie.html

利用許諾契約を締結しているUGCサービスリストの公表についてというページを見つけました。

http://www.jasrac.or.jp/info/network/ugc.html

動画投稿サイトについては755、ツイキャス、ニコ動、YouTubeなどなど約30サイト程。

ちょっと驚いたのは、ブログに歌詞を掲載できるサイトのリストです。有名なところだと、アメーバブログYahoo!ブログ、ライブドアブログ楽天ブログなど10サイトが歌詞をブログに掲載することができます。※日本の楽曲のみです。

このHatena BlogはJASRACと利用許諾契約を結んでいないので、ブログに権利の生きている歌詞を掲載すると削除されてしまうかもしれませんね。JASRACは引用については判断しきれないという理由で認めていないと以前に聞いたことがあります。引用を認める、認めないというのも変な話ではあるのですが…。

この差は音楽を内容としたブログを書きたい方には大きいですよね。日本の楽曲のみとはいえ、歌詞分析が容易にできますからね。

ちなみに、オペラなどの楽曲の邦訳は訳詞の権利が生きている場合があります。クラシックとはいえ油断なりませんね。

 

ということで、復活第1弾は音楽著作権についてでした。次回は、来週になるかもしれませんが、6月には完全復活予定です。引き続きよろしくお願いいたします。

研修の振り返り

 この1年、社員の研修を任せられています。次年度も基本的には研修担当が続く予定です。そこで、この1年で行った研修を振り返ってみたいと思います。 私が担当した研修は、権利者団体研修、権利の洗い出し研修、著作権研修の3種類の研修です。以前の事務所には会議室がなかったので、最初に行った権利者団体研修はパワポで作成した資料とノートタイプのホワイトボードを使っていました。なので、資料とホワイトボードノートを行ったり来たりして、結構、研修中にワタワタとすることが多かったように思います。

 権利の洗い出し研修はPCを使って映像を見ながらの研修で、一旦止めながらホワイトボードノートにメモを取っていました。ただし、プロジェクターを使ってということもできなかったので、3人〜4人で1台のノートPCを覗き込むような研修でした。    著作権研修を行う頃は事務所が移転し会議室ができたので、ワークショップをしながら著作物とは、著作権者とはという研修を行いました。この時もまだホワイトボードはなかったので、資料とPC、ホワイトボードノートの3つを使って研修を行っていました。

 そして、そのことに全然違和感がなかったのですが、Facebookのお友達である竹生さんから「まなボード」の存在を聞いて、すぐに取り寄せてみました。ちなみに私がツールを選ぶ時のポイントは自分がそのツールをどう使うのか具体的に思い浮かぶかどうかです。 「まなボード」は書き込みができるクリアシートの下に紙が挟めるので、マトリックスや図を挟んでその上からコメントを追記することができます。著作権の研修は意外とマトリックスや図を使うので、最初から未記入のマトリックスのテンプレートや図を挟んでおけば、受講側の社員が書き込むこともでき、その結果もスマホのカメラで保存しておくことができます。こうしておけば、前回どのタイミングで何を話したかの記録にもなります。研修を担当される方はよくお分かりになると思いますが、研修自体は生物なので、受講者によって同じワークショップやブレストをしても全然違う結果が出てきます。その結果をリサーチするためにわざと同じ研修をすることもあります。そういう場合、毎回手書きマトリックスを作成するのは時間と労力の無駄だと思います。予めテンプレートを幾つか作成しておけば、研修の準備が楽になります。

 また、研修とは少々ズレますが、私たち権利処理実務の大きな仕事の1つに台帳作成というものがあります。この台帳作成は各プロジェクトでルールが異なるので、キックオフミーティングの時などには必ず説明が必要になります。その際に、拡大した台帳を「まなボード」に挟んで上から書いていくと非常にわかりやすく説明することができます。

 電子黒板のような機材が買えなくても、「まなボード」で十分に対応できるのです。このような使い方以外にも1人1枚使用してプレゼンの練習をしたり、テンプレートだけ作っておいて、1人でブレストをしたりすることもできると思います。 ということで、次年度は「まなボード」を使用した研修をたくさん行っていきたいと思います。

権利処理実務者になるために

権利処理をする人を相対化したくないのですが、それでもこんな所が求められるといいよね、というところを何点か。ちなみに、完全な個人的見解です。

1)コミュニケーション力
 私たちはある意味、知らない人に電話をしたり手紙を書いたりして、いきなりお願い事をするわけです。
なので、相手が不快にならないように極力、努めます。それはいろいろな手段を使いますが、そういういろいろな手段を楽しく考えられることが大事だと思います。

2)記録力
私たちの財産は交渉する際の経緯です。この経緯という情報をいかに正確にわかりやすく記録するか、これは本当に大事だと思います。私自身まだまだ努力の最中です。

3)柔軟性
はっきり言って、権利処理の方法(指針)なんて、プロジェクト毎に違うのです。あの時こうだった、この時こうだったと言っても始まらないことの方が多いのです。それよりも、今回はこうなんだと受け入れる方が大事だと思います。

ここまで来て、あれ肝心なことが書かれていないと思う方もいらっしゃるかも。著作権の知識は?と。これはですね、実は最低限でいいような気がします。それよりも上記3つの方がずっと大事かと。あっもちろん、あったことに越したことはないんですけど。ローカルルールもあるので、著作権の知識だけではダメなのですよね。経験値とかの方が大事だと思います。だから、経験したいという積極性も大事だと思います。

なんてことをつらつらと書いてみました。

マイナーな「著作権」

法律の本ですけど、マイナーですけど、地元周辺のそこそこ大きい本屋に置いてないって…。

amazonは届くまでの時間がかかるのと、受けとる時間が拘束されるのがとても嫌なので、そもそも選択肢にないのです。

昨日は新宿で時間が間に合わず(新宿の本屋さんも閉店が早くなったイメージが拭えません)、今日はそもそも時間が合わず…。明日は東京で本を買う時間があるので、なんとかなるのですが、タイミングが合わないと欲しいものを手にいれることはこんなにもハードルが上がるのかと感じているところです。

まぁ、マイナージャンルと言えばその通りなんですけどね。普段、著作権の話題ばかりしていると、世間的にはマイナーだと言うことを、つい忘れてしまいます。

でも、一億総クリエイターなんて言われていた時もあるので、もう少しメジャーになったら良いのにと思います。

実務者のための著作権ハンドブック

最近は権利処理だけでなく、文章を書くというお仕事が増えました。比例して我が家の参考資料を社に持参することも増えました。

その中の1冊がこの本。この本はタイトル通り実務者のためのハンドブックです。初心者の頃はちょっと難しいなぁと思いながら読みましたが、中堅にさしかかるいま、読み直すと、判断の後押しにもなります。

特に57問ある一問一答は、痒い所に手が届く、「これこれ、これが知りたかった」ということが記されており、文字通りのケース・スタディになります。

今の版は2014年に出た第9版ですが、おそらく来年か再来年には新版が出るのではと思っています。私が買い始めたのは、第8版からですが版毎に購入しても損はないハンドブックだと思います。

実務者のための著作権ハンドブック(第九版)