権利処理実務者の諸々日記

著作権や肖像権等の権利処理に携わってきた筆者が周辺書籍の紹介等をします。

【レビュー】学校で知っておきたい著作権

 昨年購入した『学校で知っておきたい著作権』(1)

 2冊目がもうすぐ出るので、その前に簡単な感想を。

 この本を読んでまず思ったのは、分かりやすく伝えることの難しさです。分かりやすくするために多少端折ることは私もします。ただ、極力誤解を与えるような表現は避けたいと思っています。それが私の思いだけかもしれなくても。この本のどんなところにそれを感じたかというと著作物を一部「コンテンツ」と表現したことです。

 コンテンツとは「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」の第二条で「この法律において「コンテンツ」とは、映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲームその他の文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像若しくはこれらを組み合わせたもの又はこれらに係る情報を電子計算機を介して提供するためのプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わせたものをいう。)であって、人間の創造的活動により生み出されるもののうち、教養又は娯楽の範囲に属するものをいう」と定められています。確かに想像しうる著作物の大半を占めているといってもいいでしょう。しかし、「電子計算機を介して提供するためのプログラム」と限定されていることからも著作物の一部でしかありません。

 この本はしっかりとした弁護士さんが監修されており、私がここで解説をするまでもなく、コンテンツ法についても知っていると思います。そのうえで分かりやすさに重点をおいて「コンテンツ」という表現をしたということも理解できます。

 ただ、個人的にはやはり「著作物=コンテンツ」という表現に違和感を感じ、分かりやすく伝えることはとても難しいのだなと思わざるを得ないのです。

 これは1例でしかなく、ところどころに「この説明(イラスト)でいいのか」と思うところがありました。大部分はわかりやすく、コミカルに説明がなされているので、学校でも職員室に各巻1冊ずつ置いておくといいのになぁ、と思いますが、注意して読まないと細かい点で勘違いを生じてしまうのではないかとも思います。

で、結局良い本なのかどうかと言われると、個人的には他人には薦めたくないなぁと思う本でした。無論、細かい点はいいの概論を簡単に手早く読みたいという方にはお薦めできます。

学校で知っておきたい著作権〈1〉本の一部をコピーして授業で配ってもいいの?