権利処理実務者の諸々日記

著作権や肖像権等の権利処理に携わってきた筆者が周辺書籍の紹介等をします。

プログラムの著作物

以前にも書きましたが、我々、権利処理の実務者は扱う著作物によってその知識とスキルが偏りがちです。

 
ということで、最近はプログラム教育を盛んになってきていますし、プログラムの著作物について備忘録的にまとめておきたいと思います。
 
ここからは加戸守行先生の『著作権法逐条講義』を参考にまとめてみたいと思います。
 
まず、条文には 
 
十の二 プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう
 
とあります。
 
逐条講義ではまず、電子計算機の定義について言及されています。
「…記憶、演算、制御の3装置を備えていれば電子計算機に当たる…また電気炊飯器・エアコン等の家電製品などに組み込まれているマイクロプロセッサも電子計算機に含まれます」(加戸守行著 『著作権法逐条講義』六訂新版 p.46)
 
 
私の勝手なイメージでは、電子計算機はいわゆるコンピュータ(モニタがあって、キーボードがあってというもの)だったのですが、それよりも広義な意味でのプログラムだったのですね。
 
そしてこのあとにプログラムの定義として、
 
「この電子計算機に一定の仕事をさせるためには、行わせる仕事の内容、手順について逐一具体的に指令を与えなければなりません。この指令の組み合わせとして表現したものがプログラムであります。」(加戸守行著 『著作権法逐条講義』六訂新版 p.46)
 
とされています。
これを読むと指令の結果として現れモニタに写し出される画面(ユーザインターフェース)はプログラムの著作物とは言えないようです。
 
モニタに写し出される画面は美術の著作物としては保護対象になる可能性がありますが、プログラムの著作物ではないと言われています(意外とここがわかりづらいところ)。これ以降の詳しいモニタ画面の著作物性については2002年に山本隆司先生がまとめられたサイボウズ事件についてのPDFがありますので、リンクを貼っておきます。

http://www.itlaw.jp/saibouzu.pdf

やはり、普段何に接しているかで理解の度合いが変わってくると実感している今日この頃です。

尚、小学校などで最近行われているプログラム教育についてですが、ある程度決まったコマンド(プログラム言語)を子供たちが選んで入力しているのであれば、そこに創作性があるとはいえず、著作物と呼ぶには難しいかもしれません。但し、子供達が自身でプログラム言語を使って入力した場合、これは創作性が生ずる可能性があり、著作物と呼ぶに値するものかもしれません。