権利処理実務者の諸々日記

著作権や肖像権等の権利処理に携わってきた筆者が周辺書籍の紹介等をします。

作家の収支

森 博嗣氏の作家としての収支について書かれたエッセイ。これのどこが著作権と関係するのか。

私たちの仕事は例えば、森氏の作品を二次利用する時に関係するのです。

二次利用というのは、具体的に言うと森氏の作品をドラマ化したり、アニメ化したり、入試の問題で利用したりすることです。

入試問題は別としても、ドラマ化やアニメ化は森氏の許諾を得なければ制作することはできません。その許諾を得る作業も権利処理の一部です。
といっても、そういうことよりは、制作された作品をBSやCSで再放送したり、配信したりする時の方が仕事はあるのです。

そして、本の中ではいろいろ収入の内訳が紹介されていますが、入試問題や教育目的での利用も紹介されています。
入試問題での利用については、著作権法第36条に定められています。本の中では主に入学試験が紹介されていますが検定や入社試験での利用も権利者の許諾なしに利用することが可能です。但し、過去の入試問題等を集めて販売する場合は権利者の許諾が必要です。

ドラマ化やアニメ化等に比べたら1回1回の収入は少なくとも、利用さえされ続ければ、ある意味、試験が無くなることはないでしょうから定期収入とも言えるかもしれません。

著作財産権というだけあって、作家の収入を理解するには著作権は切っても切れないことだということはこの本を読めば一目瞭然。

新たな著作権の本の形だと思います。

作家の収支 (幻冬舎新書)

作家の収支 (幻冬舎新書)