権利処理実務者の諸々日記

著作権や肖像権等の権利処理に携わってきた筆者が周辺書籍の紹介等をします。

『Q&A 引用・転載の実務と著作権法<第3版>』

 みなさんは「引用」とい言葉を聞いた時、どんな点に気をつけますか。意外と曖昧な事が多いかもしれません。この本は事例を挙げながら、どういう場合に「引用」と認められるのかが解説されています。
 前回ご紹介しました福井健策先生の「18歳の著作権入門」では、引用の要件として6つの点が挙げられています。

①未公表の著作物は引用できない
②自分の作品との明瞭区
③自分の作品がメイン(=主従関係)
④自分の作品との関連性
⑤改変は禁止
⑥出典の表記

 この本では、そのうちの④以外について事例を挙げながらQ&Aで解説されています。
 これらのQ&Aの中で、私が目からうろこだったのは、写真や絵画などの引用です。
 通常、写真や絵画を「引用する」と聞くと一部分だけしか使用できないと思いませんか。少なくとも私はそう思っていた時期がありました。が、図や写真を丸ごと使用しても引用と判断できるのです。一部分の引用の方が同一性保持権に抵触する可能性があるようです。
 では、図や写真のポイントはどこにあるかというと「鑑賞性」とあります。
 本文を引用してみます。


「引用の目的に照らして必要性のないあるいは必要性の限度を超えるほどの
 高い鑑賞性」をもつ引用は、引用として認められない場合がある。
 つまり、必要性に応じた「鑑賞性」であれば、絵画や写真も利用できる。
ただし、「鑑賞性」を下げるためにカラー作品をモノクロに変えて掲載すると、「改変」にあたり、同一性保持権を侵害してしまう可能性があるので注意が必要。
北村行夫・雪丸真吾『Q&A 引用・転載の実務と著作権法』 第3版 2014 p178・180


一口に引用といってもなかなか難しいですね。


Q&A 引用・転載の実務と著作権法<第3版>